台湾地方選挙で蔡英文総統率いる民進党が大敗をしたが、この敗因について日本の左翼メディアは「台湾の民衆は中国との一体化路線をとる国民党を選択した!」的な解釈をし、一方右翼は「中国共産党の巧妙な政治工作にしてやられた」と発言しているのを見るにつけ違和感を持ってしまった。

 なぜなら香港や台湾の新聞では「中国との距離感」が与えた影響は限定的と捉えていて、本当の敗因はもっと別にあると丁寧に書いているのに、日本の言論界ではこうした分析が抜け落ちている様に思えたからである。それで拙い文章力ながらも筆者の日記でこの点を捕捉しようと思い立ったのである。

 なぜ蔡英文は負けたのか?まず第一に過去の台湾の選挙結果を見てみれば今回の選挙はそもそも負けて当たり前だったことが誰でもわかるはずなのだ。例えば民進党の陳水偏は2000年と2004年の2回の総統選挙で勝利を収めているが、しかしその2年後に行われた地方選挙では2回とも敗れているのだ。

 これは後任の国民党の馬英九政権の場合も同じで、2010年と2014年の地方選挙では両方とも野党民進党に敗北していることからも、新大統領の過度の権力集中への警戒心からアメリカ国民が中間選挙で野党に投票するのと同様に、台湾でも総統率いる与党は地方選挙では必ず負けるという政治力学が働いている事が窺えるのである。

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第二は民進党の支持者離れと無党派層の増加である。日本のニュースを見ると国民党の支持者が急速に増えたように錯覚してしまうが、台湾の世論調査推移をみるかぎり国民党の支持率は過去2年間で19.224.5%と5ポイント伸ばしただけで、就任以来一貫して支持率を落としてきた蔡英文率いる民進党と今年8月にやっと並んだくらい弱いのだ。

 増えたのは民進党から離反した無党派層なのである。その理由は台湾独立を公約にあげながらも国民党や現状維持派への配慮から足踏みしてしまった蔡英文に対する失望、それと年金改革で実入りが減った老年層、さらに台北一極集中で繁栄から取り残された地方部(=民進党の支持基盤)の不満などがあるようだ。

 そして第三はこの無党派層の迷走、と言うか正確には国民党への意図しない形での流入である。今回の選挙でも最も奇妙な現象は民進党の牙城であった台中市と高雄市での国民党候補の勝利だが、これは前述の通り民進党の支持者離反で地盤が弱体化したところへ国民党が青島幸雄や横山ノック的な変わり種の候補者を用意した事が大きいらしい。

 高雄市の韓なんとか言う元軍人が繰り出す愉快でわかりやすい選挙公約、そして絶対確実と言われた台中市長(民進党)には実は台北出身のよそ者という排外意識が地元に根強くあって、そこへ台中出身の元ニュースキャスターという知名度抜群の女性候補を持ってきたことが両市での棚ぼた的勝利につながったらしい。

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 それと同時期に行われた同性婚の可否をめぐる国民投票で、民進党がLGTBに融和的な態度を示したことにキリスト教会が猛反発し、国民党への投票を呼び掛けた事である。この問題は色んな新聞が色んな事を書いていて正直影響力がどの程度なのか?がつかめないのだが、キリスト教会は民進党の重要な支持基盤だったことは確かだ。

 そして最後に蔡英文の政治的未熟さである。台湾の政治評論家たちは蔡英文が現在行っている政策は後年高く評価されるであろう!と言ってはいるが、しかし彼女は国民の前に出てきて自らをアピールしたり、外交なり通商で得点を稼ぐといった政治的な小賢しさがあまりにも欠落している!と断じていたのだ。

 筆者は台湾にいるわけでは無いから蔡英文の人物像は十分知らないけれど、彼女は立派な学者(元国際法教授)ではあるものの役者ではない、つまりそもそも行政院長(総理)とか党幹事長などナンバー2の方が似合っている人物である!と言いたいらしい。確かにこれ・・民意で選ばれるトップリーダーとしては致命的な弱点である。

 さて指が疲れてきたのでここらで締めに入るが、以上の4点が民進党敗北の理由であり、日本のメディアが盛んに言っている「中国との距離感」が今回の争点であった!という記述は台湾の右派左派どちらを見回してもありませんでした。多くの日本の方は台湾が中国に呑みこまれるのではないか?と心配しておられますが、それ以前に日本のメディアの事を心配した方がよろしいかと思いますよ。

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