(前日からの続き)国民党が台湾に追われた当時「このままではアジア全域が共産主義化しかねない!」と危惧していたのはアメリカで、各国に反共政権を樹立・援助していくのだが、しかし独裁者や腐敗政権にアメリカ国民の税金が使われることを議会で突っ込まれると困るから、国民党が乗っ取った麻薬ビジネスに一枚噛むのは自然の成り行きであった。

 それでベトナムのジエムやラオスの王党派、タイのタノムにビルマのネ・ウィンなんて悪名高い政治指導者にアヘンの上りをつぎ込んでいったのだが、これ蛇足だけど朝鮮出身のギャングだった児玉誉士夫が戦後裏社会のトップになれたのは、児玉が日本における麻薬利権の受益者の一人だったからである。

 で、国民党とアメリカCIAはこうしたアヘンビジネスを20年ほど続けてきたのだが、しかしカネを渡した東南アジアの政治家たちはさんざん私腹を肥やすだけで、むしろ民衆の反感が強まって共産化が進んでしまうにつれ、ワシントンDCに「国民党って疫病神じゃね?」と言う空気が蔓延していったらしい。

 ベトナムでの敗色が決定的になるやキッシンジャーが北京に飛んで周恩来と秘密協議を行い、ここで国民党を切り捨てることがほぼ確実に固まったわけだが、さてここでアメリカCIAの頭を悩ませたのは国民党が握っているヘロインルート、そしてアジア各地の反共人士との繋がりをどう処理するのか?という事であった。

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 世界から見放されたとはいえ国民党はまだ巨額の工作資金源(=麻薬ビジネス)を持っているし、各国の独裁者との利害関係が続いているのはアメリカにとって好ましくない訳である。さらにその財源を中国共産党が横取りする気でいる事はアメリカも重々承知しており、いくら米中国交に向かっていとうが中国共産党がそれ以上強くなってしまうのもアメリカとしては困る・・・。

 それでアメリカCIAがアヘン産地から直接買い上げる事で国民党を中抜きしたのだ。いくら販路があろうがブツが無ければ商売にならないわけで、さらにアヘンからヘロインへの精製拠点だった香港で徹底的な摘発を行い、アジア各国の国民党の回し者(=ヘロイン利権受益者)を失脚させていったのだが、この文脈でロッキード事件を見ていただくと良いでしょう。

 で、以上長々を書いてきたが、この国民党が戦後のアヘン王だった!というのは何も筆者の推測ではなく、香港のある一定世代の人たちなら誰でも知っている話で、マカオのカジノ王スタンレー・ホーや香港最大の海運王ら非常に有名なビジネスマンがアヘンビジネスで財を成したことは常識中の常識である。

 さてここで冒頭に「パパブッシュは麻薬王」と書いたことを思い出したが、これはCIAが産地直接買い上げをした年(蒋介石が死んだ翌年である)にCIA長官に就任したのがたまたまパパブッシュだった・・というだけで、ブッシュ一族が中国のアヘンと深い関わり合いがある!というのは妄想の域を出ない話です。それにそういう方はちゃんと別にいますから。
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